それは衝撃的な出会いだった。
ある展示会会場をそぞろ歩き、そろそろ休憩でもしようかと目の前の角を曲がったところだった。
ギョッとした。

目に飛び込んできた巨大ポスター。
雪と氷が張り付いた、身震いするような寒々とした登山道に、浅黒く日焼けした登山家と思われる男たちがずらり並んでいる。
しかも、どう見ても氷点下であろう環境下において、真っ白な肌着の上下姿で「どうだ!」と言わんばかりにこちらを見ている。
見ている…見ている…見ている…
あまりの衝撃に、身動きが取れなくなった。
これが、私と健繊との出会いだった。
健繊
健繊(けんせん)と聞いて、ウィンタースポーツや登山をする方なら、ピンとくる方もいるだろう。

昭和52年創業の、独自の肌着等アンダーウェアを、生地の編み立てから、裁断・縫製、箱詰めにいたるまで国内で行い、製造販売する繊維メーカーである。恥ずかしながら私は、ここで出会うまで、「健繊」という会社が繊維メーカーであることを知らなかった。
会場で話しかけてきたのは、その巨大ポスターから抜け出てきた登山隊の一員であるかのような風体の阪本さんだった。

「この肌着に手を入れてみてください!暖かいですから!」
面食らう私の手を取り、肌着の袖口に差し入れた。
そして、その大きな手で私の手を包むと…
「ね、ね、暖かいでしょう!」
くりくりとよく動く大きな瞳と、愛嬌のある笑顔が私を見てそう言った。
「暖かい…」
確かに、すごくすごく暖かかった。
目を閉じてうっとりするような、ぽかぽかとした自然なぬくもりが、私の腕を包んでいた。
商品名であろうか、目の端にとらえた「ひだまり」の文字そのものの暖かさだった。
阪本さんの真っすぐな瞳と、そのひだまりのような暖かさ。
これだけで、私が健繊と言う会社に夢中になるのには充分だった。
(続く→「理由編」 https://climb-akita.com/gift/1152)
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