「お父さんが飲むなら、僕も飲む。」
最近、息子は大人の真似ばかりしたがる。
コーヒーなんて今まで興味もなかったのに、急に「飲みたい」と言い出した。
そんな日にかぎって、砂糖もミルクも用意がない。
「ブラックだぞ。苦～いぞぉ。飲めるか？」と脅かしてみる。
「ブラックだって大丈夫。僕が淹れるから。」コーヒーを淹れたいとまで言い出した。
ハンドドリップにはコツがいる。だから、まずはインスタントのドリップコーヒーにチャレンジ。
シングルバーナーでケトルに湯を沸かしたら、そぉっとゆっくりコーヒーに注ぐ。
まずは全体に注いで、20秒ほど待つ。
香りが立ってきたら、クルクルと円を描くように湯を回しかける。
真剣な眼差しに、時が止まる。
もういいよ。熱いから気を付けて。マグカップを息子に手渡した。
「………苦い…」飲んですぐに顔をしかめたけれど、
「…だけど、うまいよ。大人だね。」とすぐにご満悦。
コーヒー淹れたし、コーヒー飲めた。ほんのちょっとの冒険が、大きな思い出になる。
今度はハンドドリップ教えるから。野遊びコーヒーは、冒険と成長の味がした。
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