ほんとの空

秋田竿灯祭りが始まった。

この祭りは、260年以上の歴史を持ち、国重要無形民俗文化財にも指定されている。
週間天気予報をみれば、祭りの間はなんとかお天道様に嫌われない空模様のよう。
秋田に住む人々の、様々な願いや祈りが形となった歴史と文化の祭典。ぜひ、たくさんの方々に足を運んでもらいたい。

 

空模様といえば…

 

今年は、雨が少なく晴天が続いたり、突然の豪雨や落雷と、くるくると目まぐるしく表情を変えている。
入道雲がモクモクと大きく立ち上り、まるで今まさに、雷様が空から降りてくるかのよう。

 

水色絵具で、思い切りよく塗りたくったような曇りのない青空。

空9

墨を落としたような、薄暗い曇天。

空6

長く、暑い一日を惜しむかのような、夕焼雲たなびく茜色の空。

1夕焼け
どの夏空も美しく、そしてその様は、視線をずらしたその瞬間表情を変える、はかないものだ。

 

 

そして、高村光太郎がつづった詩集「智恵子抄」の中の、「あどけない話」にも、空の話が出てくる。

 

あどけない話

 智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
 私は驚いて空を見る。
 桜若葉の間に在るのは、
 切つても切れない
 むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
 うすもも色の朝のしめりだ。
 智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である

 

智恵子にとってのほんとの空は、「阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に毎日出てゐる青い空」だが、光太郎にとっては、自分が生まれ育った東京の空がほんとのそれだ。
人それぞれ、自分の思う「ほんとの空」は、違うものなのだろう。

 

季節だったり、場所だったり、時間だったり、様々に表情を変える空。
自分のふるさとだったり、大切な人が住んでいたり、今頑張って懸命に生きている場所だったり…それぞれに強い思いを持つ土地の上に広がるそれが、その人にとってのほんとの空なのかもしれない。

 

あなたにとって「ほんとの空」とは、どんなものだろうか。

アメドと空

目まぐるしく表情を変える今年の夏空。フィールドに出て、空を見上げて、心の内を確かめてみるのもよい夏の思い出になるかもしれない。

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